アースガーデン

農的暮らしのデザイン

小さなホームガーデン作り

これまでに何度か、自宅のホームガーデンを作ってきました。その1回目は大阪府高槻市の公団集合住宅5階のバルコニーガーデン、2つ目は田舎暮らしをスタートした南丹市美山町のアースガーデン(敷地679㎡)、3つ目は京丹波町にある今の自宅(敷地298㎡)のガーデンです。
京丹波町のガーデンは高齢者が使いやすいガーデンで、協働作業を合計15回と特別ワークショップ2回を実施し約2年3ヶ月かけてできあがりました。エコガーデン、エディブルガーデン、ビオガーデン、フォレストガーデンの性格を持つパーマカルチャー・ガーデンの一例です。その施工プロセスについてお伝えします。

敷地

私の自宅は小さな住宅地の中にあります。当初はチガヤに覆われた野原のような場所でした。一見モヤシのような、でもモヤシよりもずっと硬い根っこが地面下10cmくらいのところにびっしりと根を張った粘土質で、移植ゴテは言うに及ばず体重を乗せたスコップさえも地面の中に入らない状態でした。このような手ごわい土地にまずは何をしたら良いのか……できそうなことを考えることからスタートしました。その結果まずは大型マメ科の緑肥を播種することから、ガーデン作りを開始しました。実際にここに転居する2ヶ月半以上前のことでした。

ガーデン作りのサポート体制

かつて美山町のアースガーデンのスタディツアーに来られた方々が、私の転居先でのホームガーデン作りのためのサポートグループを作ってくださいました。グループのメンバーは当初10人で、その後15名となりました。お陰で高齢者の私がひとりでガーデン作りをしなくても良くなり、心強かったです。いずれもパーマカルチャーに関心を持たれ、学習経験があり、特定領域ですでに活動されている方も複数おられました。

この方々に私の自宅のガーデン作りを通じて、造園技能を体験的に身につけていただこう、と考えました。そして毎回の技術指導を、パーマカルチャー関西(PCK) 代表の橋本憲一郎さんにお願いしました。私も毎回、ガーデン、植物、パーマカルチャーについてのプチトークをさせていただきました。このような学びと技術習得を伴う15回の協働作業に加えて、敷地内の水脈作りや通気性を高める特別ワークショップを2回実施し、HYPER∞RELAXを主催されている庭師で大地の再生士、さがひろかさんに講師をお願いしました。

毎回の協働作業にはサポートグループのメンバーより5名〜9名が参加してくださいました。ガーデンデザインは施主である私が考えて、橋本さんのご意見も伺い、毎回の作業予定に落とし込んでいきました。ひとりでするよりもこの方法はプラス面が多くあり、とても良いやり方だったと思っています。合計15回のグループでの協働作業と、2回の特別ワークショップで、合計2年3ヶ月を経て当初予定していたガーデン作りは完了しました。以下がその作業記録です。このようなガーデンの作り方があることを、参考にしていただきたくて、HPに公開することにしました。

ガーデン作りの作業記録

合計15回+2回のホームガーデン作りの作業を初期、中期、後期の3回に分けて、各回の作業内容をお伝えしています。【  】内はコメントや補足です。写真は下をご覧ください。

初期の作業:1回目〜5回目

1回目—2019年7月29日

家の基礎造りで掘り上げられていた土を、ユンボで平らに広げ植床とし、参加者8人で大型マメ科の緑肥作物、クロタラリアとセスバニアを交互に条蒔き。(写真1、写真2)
【播種の約20日後の様子→ (写真3)播種時期はもう少し早い方が良かったかも?】

2回目— 2019年9月30日

緑肥が開花(写真4)。緑肥の根粒菌(写真5)。刈り取りと植え床作り(写真6)。

3回目—2019年10月28日

支柱立て(写真7)、植床間の通路作り(写真8)。
植物が植えられ、ガーデンの初期景観ができる。

4回目作業—12月9日

廃瓦で植床を作る(写真9)。

5回目作業—2020年1月20日

堆肥や生ゴミEMぼかしあえで土作り。パーゴラ作り(写真10)
【同年6月に夏野菜が元気に育つ様子→(写真11)】

これらの写真には作業参加者がご提供くださったものが含まれます。
ここに使用させていただくにあたり、以下の方々(敬称略)にお礼を申し上げます。
宮本愛麗、橋本憲一郎、Mitsuo Inoue、市之瀬摩衣子

中期の作業:6回目〜12回目

 6回目—2020年3月9日

ガーデン北側をユンボと手作業で整地(写真12,13)
南側洗い場から花壇への排水路作り(写真14)

7回目—2020年4月20日

玄関前のアプローチ作り。両端はハーブガーデン予定。(写真15,16)
【同年8月の様子。ハーブと園芸植物が植えられている→(写真17) 】

8回目—2020年10月12日

西側に防草シートと砂利を敷く(写真18)

9回目—2020年12月7日

東側のフォレストガーデンの植床に角材を土留め用に設置。工程が多く次回に持越し。(写真19, 20)

10回目—2020年12月23日

前回の続きとして、角材による土留めと、平板レンガのペイビング。
写真21はロフトの窓から見下ろした作業の様子。(写真21, 22)

後期の作業:特別ワークショップと11回目〜14回目

特別ワークショップ1回目—2021年3月22日

大きな水脈作り。通気性の改善(写真23, 24)
【雨天時や冬の降雪でぬかるみがひどいガーデンだったので、急遽このワークショップを開催。でも手順面でガーデン作りをスタートする前にしておいた方が良かったようだ】

特別ワークショップ2回目—2021年4月19日

大きな水脈につながる細かい水脈作り。通気性の改善。
まずは説明を聞いてから作業に。(写真25)   
【その後、多雨の後に水たまりやぬかるみの発生が減少し、排水性と通気性が改善していることを確認。】

11回目—2021年5月24日

水脈溝の上に透水性シートを敷き、砂利を敷く。角材の土留めを追加(写真26)

12回目—2021年6月28日

メインの園路を平板レンガでペイビング(写真27, 28)
【平板レンガや、防草シートと砂利の施工に予想以上にこれまで作業日数を要した。】

13回目—2021年7月26日

雨水タンクを2基設置。白い円筒形のタンク330リットル(写真29)と、プラスチックだけど樽のようなタンク350リットル(写真30)
【どちらもシップスレインワールド(株)より購入】
【その後9月に、グループ作業の補足として、個人作業を計2名に各々1日ずつ依頼。作業内容は、雨水タンクの位置調整と、周辺の防草シートと砂利敷き作業】

14回目—2021年9月27日

食事とTea timeの場所作りのため、平板レンガでペイビング。(写真31)
【その11日後には椅子テーブルを設置(写真32)】

15回目(最終回)—2021年11月1日

勝手口を出た所のデッキ階段の下に防草施工。これで足元が安定。(写真33, 34)

このガーデンの特徴

2年3ヶ月間に渡る合計15回の協働作業と2回の特別ワークショップで、このガーデンは完成しました。多くの方々にお世話になりました。PCKの橋本憲一郎さんは毎回、様々な造園技術指導に加えて、多くの作業をしてくださいました。ありがたく思っています。水脈作りと通気性改善のワークショップでは、さがひろかさんにお世話になりました。毎回遠方から協働作業に参加してくださった方々にも感謝しています。皆さまが作ってくださったこのガーデンは、私にとってとても大切な場所になりました。

このガーデンの植栽は美山町の元アースガーデンとほとんど同じですが、外観の雰囲気が少し異なる場所があります。それは高齢者の草刈り作業を軽減するため、平板レンガのペイビングや、防草シート上に砂利が敷かれている所です。(これらの防草施工をしなければ、10回位の作業で終わった可能性があります。なお平板レンガはセメントで固定していないので、再利用が可能です。)

パーマカルチャーのガーデン作りでは、通路の防草対策に中古ダンボールと剪定枝のウッドチップがよく使われます。良い方法ですが、年月が経過するとやりなおす必要があります。私は高齢ですでに腰や膝に問題が発生していたので、より恒久性の高い防草施工を選択しました。高齢者配慮型のガーデンになったので、「老女ガーデン」とも呼ばれています。 

今回の協働作業によるガーデン作りの方法は、以前に私が体験したWWOOFという労働交換システムにヒントを得ました。WWOOFはホストより宿泊と食事を提供されて、有機農場で作業をする労働交換です。今回は日帰りで造園技能指導とプチ・トークをし、皆様に作業をしていただく労働交換でした。参加者の方々には10時半に現地集合してもらいました。ランチタイムは一品持ち寄りのポットラック形式で楽しいひとときとなり、15時以降にはTea timeがありました。作業終了は17時でしたが、時に長引いたり、自主的に残業をしてくださった方もありました。個人住宅の小さな庭のため、作業参加はグループメンバーのみで、非公開で進めてきました。 

このガーデンでは有毒化学物質が抑制されています。日本の枕木は発がん物質を含む防腐剤で処理されているので使っていません。(一般に家屋解体からの廃材利用にも注意が必要です。CCA剤処理や、クロルデン、クロルピリホス、クレオソートで防蟻処理された木材が混入されていないかを確認し、ウッドチップを購入する際も同様の確認をお勧めします。)有害化学物質に注意し、農薬、除草剤、化学肥料の使用を控えれば、安心安全なガーデンになります。地球環境と人に配慮したお庭だと思うので、そのようなガーデン作りを皆さまにもお勧めしています。

ここは人間だけでなく多くの生き物にとっても居心地の良い場所です。このガーデンの陶器の睡蓮鉢には近所からカエルがやってきて、シーズン中住みついていました。合併浄化槽の点検業者さんには殺虫スプレーを使わないようにお願いし、その処理済み排水はまずコンテナの菖蒲ガーデンに入れてからU字溝を流れていく仕組みにしました。この菖蒲ガーデンに、モリオアガエルの雄が来て長期滞在していた時期がありました。菜園の収穫野菜を洗う野外シンクからの排水はフォレストガーデンに入ります。このような水の有効利用の仕組み作りは、とても簡単にできました。

ハーブや山野草、薬草、多年草の草花が育ち、一年草野菜の菜園、果樹のスペース、フォレストガーデン、シェードガーデン、蝶のガーデンや蜂たちの蜜源となる植栽がされ、トカゲハウスもある生物多様性の豊かなスペースです。捕食/受粉昆虫用の簡易インセクトホテル、鳥の水飲み場やトカゲハウスもあります。土の中には見える土壌生物だけでなく、見えない微生物や菌類が無数に生きています。

このガーデンは「食べられるビオトープ」です。多くの命が感じられるガーデンで、自給作物を育てながら暮らすのはとても楽しいことです。今後は皆さまがこのようなガーデンを作られるのを、デザイン面で応援していきたいと考えています。

2024年2月 植月 千砂