アースガーデン in 美山町
アースガーデンのデザイン
アースガーデンの敷地679㎡には、有機ガーデンと環境共生型の健康住宅がありました。
ガーデンでは生物多様性が育まれ、多くの食べ物が育ち、「食べられるビオトープ」のようでした。
パーマカルチャーデザインを手引きに設計され、自然エネルギーやバイオエネルギー、いくつかの適正技術が使われていました。以下に説明します。
1. 自給用有機ガーデン
アースガーデンのお庭では、多くの山野草、野菜、ハーブが収穫できました。多年草の草花も多く植えられ、目を楽しませてくれました。
何度かガーデンの生態系調査をしましたが、2012年5月の植物調査では、679㎡の敷地とその周辺で、約176種類の食べ物(野菜、果樹、山野草、ハーブ、キノコなど)が確認されています。
それ以外にも薬用効果のある山野草が32種類見つかり、合計232種類の食用/薬用植物(=有用植物)が確認されました。
小さなガーデン全体が、食べられるビオトープのようでした。土壌圏も地上部も生物相が豊かで、野鳥や蝶、昆虫との出会いが多くあり、人間のニーズである食糧生産と、生物多様性の保全が両立しているお庭でした。
手作りの池には毎年、初夏にモリアオガエルの産卵が見られました。
春は球根類の花々が咲き、夏はフォレストガーデンのようになり、四季の移り変わりを感じながら、心やすらぐスペースでした。
日本各地や海外からの多くの方々が見学セミナーに参加され、命あふれる有機ガーデンを体験されました。
お庭の様子をさらに詳しくみるには…
2. 環境と健康に配慮した建物
パッシブソーラーのデザインにより、建物の軒は、夏の太陽を遮断し、冬の日差しを入れる角度になっていました。
建物には地場木材をふんだんに使い、床には柿渋、未晒し蜜蝋ワックス、ドイツ製の無公害塗料、壁には化学物質無添加の布クロスで、シックハウスの原因物質が抑制されていました。
3. 雨水や排水の活用
ガーデンには小さな雨水タンク(200リットル)が2つと、大型バケツの雨水タンクが2つあり、合計540リットルの雨水が溜められ、菜園や花壇への散水、ガーデン作業の道具洗いに使われていました。
なお、さらに規模の大きい雨水活用例もご紹介します。以下の方のお宅です。
プライベイト・キッチンからの排水は、Macrophyte Grey Water Filterと呼ばれるバイオ・ジオ・フィルターで処理されていました。
これは、オーストラリアのエコビレッジ、クリスタルウォーターズに滞在中、バリー・グッドマン氏のお宅でこの仕組みを見学し、いただいた資料を参考に作りました。
排水が砂と土で濾過され、大型水生植物の根についた微生物で処理される仕組みです。
処理済みの水は葦が植えられた土に吸収され、余ればガーデンへと流れます。
4. 自然エネルギー、バイオマス
アースガーデンでは自然エネルギーやバイオマスといった再生可能なエネルギーが活用されていました。化石燃料(石油、その他)への依存を少しでも減らしたかったからです。
薪ストーブとペレットストープ、屋根には太陽熱温水器と、(認定NPO法人)きょうとグリーンファンドの太陽光パネルが設置されていました。
① きょうとグリーンファンドのおひさま発電所
2009年8月、アースガーデンの屋根に認定NPO法人きょうとグリーンファンドの5kW規模の太陽光発電パネルが設置されました。
9月6日には点灯式が行われ、きょうとグリーンファンドの13機目のおひさま発電所となりました。(1機目〜12機目はすべて京都市内で、13機目は南丹市で初めての設置事例でした。)
この費用は平成21年度日本郵便の年賀寄付金助成金と、きょうとグリーンファンドの「おひさま基金」、市民の皆様よりの資金協力(設置協力金と寄付)、アースガーデンの資金でまかなわれました。
② 太陽熱温水器
家屋の施工時(2002年)にNEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)の補助金をいただいて設置しました。
サンファミリーという真空式ソーラー温水器で、日本電気硝子株式会社の製品でした。(その後、生産は終了)
雨や雪で太陽熱の温水が得られない時は、バックアップ用の灯油給湯器を使っていました。
春(4〜5月)から晩秋(11月)までは太陽熱温水器が大活躍で、毎年5〜7ヶ月間は一度も給湯器用の灯油を購入せずに過ごせてきました。
心がけとしてお風呂はお湯がさめないうちに入浴し、残り湯は温かいうちに洗濯に使い切っていました。
浴槽には浄化ユニット(濾過装置と紫外線殺菌)がついていたので使用後もお湯がきれいで、安心して洗濯に使えました。
冬は太陽熱温水器に雪が積もっている日が多く、おひさまによるお湯は得られない日が多かったです。
③ 薪ストーブ
薪ストーブが1階のカフェスペースに設置されていましたが、燃やすと2階の2部屋も同時に暖まるように設計されていました。
雪で湿気の多い冬でも、薪ストーブをたくと室内は乾燥し、洗濯物も一晩で乾きました。
ストーブの周りは家族や友人達の暖かい居場所となり、熾き火でヤキイモを楽しんだりしました。
薪ストーブを燃やした翌朝は、まだそのぬくもりが残っていて寒さをあまり感じませんでした。
燃えた後の木灰はカリ肥料としてガーデンで使ったり、近所の方が栃の実を加工する際のアク抜きに使われたりしました。
薪は細枝(火付け用)、中細枝(中継ぎ用)、太枝(火が安定した後に使用)の3種類をつかっていましたが、細枝は庭の樹木の剪定枝で全て賄い、中細枝も多くが庭で得られました。
太枝は庭では5%以下しか得られず、95%以上を地元の薪屋さんから購入していました。
薪を自分たちで全て自給できればよかったのですが、私たちは忙しすぎて断念しました。
5. 養分循環
生ゴミコンポスト・ミミズコンポスト
ガーデンには2つの生ゴミコンポスト容器が設置されていました。
ひとつは調理の時に出る生ゴミ用でキッチンの近くに設置されていました。
生ゴミを入れる時は、ヌカを少量ふりかけ庭の落葉樹の落ち葉を上にかけていました。
もうひとつは菜園に設置され、収穫の時に出る野菜クズや刈り草を堆肥化するのに使っていました。
加えて2つのミミズ・コンポスト容器もありました。
ひとつは衣装ケースで手作りのミミズコンポスト、もうひとつは市販のキャノワームでした。
以上合計4つのコンポストは、有機ガーデンになくてはならないものでした。
「ぴょんポスト」
以上に加えて「ぴょんポスト」と呼ばれるコンポストがありました。
ペットのウサギのトイレより作られていました。
トイレの砂用には、オカラのペレットとヒノキ鋸屑のペレットが半分ずつ使われ、ウサギの排泄物と共に分解され、オーガニックフラワーの花壇に使われていました。
ヒノキの鋸屑の分解に少し時間がかかり、未熟堆肥として注意して使っていました。
まず多くの花が咲き終わり花壇にも落ち葉が積もり始める11月始めに、ぴょんポストを花壇の落ち葉の上に表層マルチします。
11月終わりにはぴょんポストマルチの上にさらに落ち葉が積もり、冬には雪に覆われます。
そして春になるとぴょんポストの養分で花が美しく咲きます。
ガーデンには30種類くらいウサギの食べ物があり、その中から数種類を少し乾燥させたものを、オーガニックな「ウサギ日替わり定食」として、市販の餌に加えて毎日与えていました。
だからぴょんポストはウサギからお庭へのお返しで、ウサギはガーデンの養分循環の一部になっていたのです。
「美山だより@アースガーデン」のVol.1とVol.6にこのことを少し書いています。
人間の排泄物がクリーンな液肥に
人間の排泄物も有効利用されていました。
簡易水洗トイレの一つ(写真)が家の外の地下に設置された3㎥の小さなメタン発酵槽につながり、自然流下で排泄物が入り、嫌気発酵でクリーンな液肥が作られていました。
発酵の際に調理用のガスも発生するので、バイオガス・システムとも呼ばれる仕組みです。詳しくは「美山だより@アースガーデン」Vol.2とVol.3に執筆しています。
6. パーマカルチャーについて
パーマカルチャーはpermanent(永続的な)agriculture(農業)の合成語で、自然生態系の原理に基づくデザインシステムです。
1970年代にビル・モリソンとデビッド・ホルムグレンにより体系化された後、世界各地に広がり、異なる風土、気候帯、異なる文化、社会の人々の取り組みを経て、絶えず変化し発展しています。
当初、パーマカルチャーは持続可能な農や有機ガーデン作りの手法と見なされていましたが、 農の領域だけでなく、建築、居住地、地域作りや、ソーシャル・パーマカルチャーと呼ばれる社会経済的な領域でも取り組まれています。
例えば地域通貨や労働交換(LETS)、相互扶助システ ム、協同組合、組織やネットワーク作りです。12の設計原則があり、それらで意図的にデザインされたものがパーマカルチャー事例ですが、同様な事例を日本の里山を含む世界中の伝統的な暮らしの中に見い出すことができます。
都市部でも取り組まれ、アーバン・パーマカルチャーと呼ばれています。パーマカルチャーデザインはさまざまな規模で適用され、個人宅(戸建てや集合住宅)、学校校庭、コニュニティー・ガーデン、地域再生やエコシティ、エコビレッジ作りに生かされています。
またパーマカルチャーは、「…世界中の豊かな国と貧しい国の双方で、個人や団体が活動するネットワーク、運動体」 (デビッド・ホルムグレン) でもあります。
パーマカルチャーには、
- 地球への配慮
- 人々への配慮
- 公正な分配
という3つの倫理があります。
公正な分配とは「資源や余剰物を公平に分かち合うこと、地域での支援とエシカルな経済の仕組み、成長と消費の限界への認識、私たちのエコロジカル・フットプリント内で生きるという考え方」(ロビン・フランシス) と言えます。
ー「土の健康」2020年NO.505(日本有機農業研究会)への寄稿文より抜粋、加筆修正
パーマカルチャーについてより詳しいことは、リンクをご参照ください。