アースガーデン

アースガーデン in 美山町

牧野洋子さんの雨水活用例(ニューサウスウェールズ州, オーストラリア)

生活用水の全てを雨水でーオーストラリア、エコビレッジの暮らし

オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のゴールドコースト空港より車で約1時間半のところに、ジャランバー(Jarlanbah)というエコビレッジがあります。この村では、雨水を貯めて生活用水の全てを自給する規定があり、1軒あたり22,500ℓの雨水タンク2基分、合計45,000ℓの貯水が義務付けられています。(うち10,000ℓは火災時の消火用に、貯めておくとのこと。)

村には43の住居区画があり、その一つ2000平米(約600坪)の敷地に洋子さんご家族が1996年から居住されています。
3人家族のこの家庭では、ジャランバーの規定の3倍の分量に当たる合計135,000ℓの雨水が3基のタンクに貯水され、生活用水として使われています。
排水は汚水も含めてガーデンの北西角付近に地下設置されたミミズの浄化槽に流入し処理され、処理済み水は水洗トイレや、庭の複数の散水用蛇口でリサイクル利用されています。(ちなみにオーストラリアでは一般家庭の水道使用量の20%~25%が水洗トイレに使われていると言われ、処理済みの水を水洗トイレに再利用することは節水効果が高い)。

なおこのような工夫をされていても過去に2回、給水車(有料)のお世話になったことがあるそうです。
1回目は20年以上前、干魃の年の春にタンク1は干上がりタンク2も半分以下になった時、2回目は昨年(2019年)末、100年に一度と言われた大旱魃でタンク1とタンク2が干上がり設置以来初めてタンク3の水を使い始めた時に村の北側の山に火の手が上がり徐々に燃え広がり、この村に住んで初めて村の中に避難所が設置される事態になった時です。

洋子さんは言われます。

雨水タンクの暮らしは、広大な乾燥大陸オーストラリアでは決して珍しい事ではありません。都市部以外では農村地域、内陸部でもほとんどの人たちが雨水タンクで暮らしています。
雨の少ない地域では地下水や溜池の水を汲み上げて使う用のタンクを設置しています。調理は雨水、それ以外は地下水か溜池の水で、という具合です。
内陸では雨水は貴重なのです。

田舎で上水道が供給されているのは街の中心の極一部だけです。昨年の大旱魃の時はうちの村の周りでさえも洗濯に溜池の水を使い始めて服が洗ってもなんとなく泥臭くてキレイにならないという話も聞いたほどです。
最近では都市部での人口増加に伴う水の供給難から度々水の使用制限が出されるシドニーやブリスベンでも小型の雨水タンクを設置してガーデンの水やり、洗車などに利用する家庭が増えています。
近隣住民からの非難や役所への通報を回避するために「雨水タンクを利用しています!」という看板を門扉に取り付ける郊外住宅も多くあると聞きます。

洋子さんは「水の豊かな日本が羨ましい …」と言われます。
でも気候変動で日本では台風、洪水、土砂災害が最近多発し、それに伴って断水が何日も続くことがあります。大型雨水タンクがあれば、そんな時に役立ちます。
また最近、梅雨明け後に雨が降らない時期が9月半ば頃まで続くこともあります。梅雨時に雨水をタンクに貯水し、真夏の日照りに備えることもできます。雨水活用システムがうまくデザインされたこのお宅の暮らしは、とても参考になります。

なお大型雨水タンクで生活用水をまかなう暮らしにご関心のある方は、WWOOF Australiaのメンバーになり、ホスト・リストでJarlanbahや Crystal Watersなどのエコビレッジ在住のホストを探し、WWOOFerとしての滞在を受け入れてもらえれば、雨水のある暮らしを体験できます。

またエコビレッジ以外でもこのような暮らしの例が見つかると思うので探してみてください。

(2020年9月 植月)

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