アースガーデン

訪問・滞在・参加レポート

CAT(Center for Alternative Technology, Wales)

2015年9月の英国でのパーマカルチャー国際会議(IPCUK 2015)に参加した後、私はロンドンから鉄道でウェールズに向かいました。CAT を是非とも訪れたかったからです。CATはエコパークであり、代替技術センターであり、様々なレベルの環境教育プログラムが提供されている所です。最寄りの駅はマカンレス(Machynlleth)です。  私はそこからさらに30分ほど鉄道で西に行った終着駅の港町アバリスツイス(Aberystwyth) に2泊宿をとり、そこからCATに出かけることにしました。

CATは建築を専攻したパット・ボーラー (Pat Borer) がスタートし、私が訪問した前年に設立40周年を迎えていました。
ここでは現代社会の主流となっているエネルギー浪費型、環境破壊型の技術に取って代わる適正技術や代替技術が実験・検証され、展示されています。それらが様々な教育プログラムとなり、一般の人々もその知識を共有できるようになっています。教育プログラムは日帰りから、中期、長期にわたるものもあり、子供向けの楽しいものや、大学や大学院の学位が取得できるものもあります。PDC (パーマカルチャー・デザイン資格) コースのプログラムもあります。

写真1 は途中の車窓からみた風景です。写真2 はマカンレス駅の北側で、太陽光パネルのある青い屋根の建物が風景と調和しています。写真3 は駅の南口で、パーク&ライドができる駐車場と風車があり、エディブルガーデンがありました。いずれもCATの最寄りの駅らしい特徴でした。エディブルガーデンの説明表示もありました。地元のボランティアグループの人たちで作られたものです。マカンレスの複数の場所に、食べられるガーデンが公共空間として作られ、どのガーデンでも誰もが自由に食べられるそうです。鉄道の駅にできたガーデンはユニークで、自宅に帰る途中まだ食べたことのない食用植物を摘み取って試食できます(写真4)。https://www.machmaethlon.org/about/

この駅の南口から徒歩2~3分のところにバス停があり、北へ8キロ行ったところのバス停で下車しました。ここから2分でCATの有名なケーブルカー(Cliff Railway) の乗り場に行けます。

これがそのケーブルカーです。

水の重さと重力の法則だけで、1本のケーブルで繋がれた2台のケーブルカー車両の軽い方が上がり、重い方が下りる仕組みになっています。
もう少し詳しく説明すると、上の駅のそばには周辺の山々から水を集めた貯水池があり、その水がひとつの車両のタンクに入れられます。もうひとつの車両には水が入っていません。すると水を入れられた方の車両(写真5 の向かって右側) が水の重さで降りて来ます。水が入っていない車両 (写真5 の左側)はケーブルに引っ張られて上がっていきます。
下の駅まで降りたら、右の車両から水が放出されます。そして上の駅まで上がっていった左の車両には、水が入れられます。すると今度は左のケーブルカーが水の重さで降りていき、右のケーブルカーが上がっていきます。
乗車中はスノードニア国立公園の最南端に近い美しい山々の景色が楽しめます。このケーブルカーは1990年代に作られ、世界には7つこの種のケーブルカーがあるそうです。

CATの中へ

ケーブルカーの上の駅に到着すると、ショップと案内所があり、複数の園路へと続いています。園路を行くと以下のものを見ることができます。

  • 住居など建物のサイト〈伝統的建物とモダンなもの)
  • オーガニックガーデン
  • フォレストガーデン
  • コンポスト(いろいろな種類)
  • 生態系の展示物→モグラの穴
  • 代替エネルギー(ソーラー、風力、水力、木質)
  • 子供の遊び場
  • 野外の食事場所(ピクニックの場所)
  • 会議場と大学院(ーWISEという名称の新しい建物)
  • レストランと集会室
  • 宿泊用エコキャビン(木造で屋根が緑化)
  • 水洗トイレとコンポストトイレ(一つは水洗式、他は水を使わないドライ式)
  • ソーラードーム
  • 森の活動場所
  • その他

 (学校の休暇中は無料のツアーがあります。)

以上のうちのいくつかをこれから写真と共に紹介していきます。

写真6 の建物はストローベイルでできた小さな劇場です。CATには様々な実験的建物があります。1989年にウォルター・シーガル(Walter Segal) という建築家が設計した木造の家で、基本的な技能しかなくても人々が自力で建てやすい住宅モデルもあり、手頃な費用でできるこの方法が多くの人々に伝授されてきました。周辺には商業建築に進化したモデルもあります。

写真7 の建物はWhole Homeと呼ばれる住宅展示場にあった家で、ヨーロッパで当時もっとも断熱性の高い家で、珍しい構造になっています。その後サンルーム(Conservatory)が作られ、パッシブソーラーの恩恵も受けるようになりました。

家電の説明や、ソーラークッカー、自然光を室内に取り入れるサンパイプ(Sunpipe)の展示説明もありました。(写真8、9)

この家の隣には木質エネルギーの展示部屋があり、様々なストーブがあり、とても効率よく熱とお湯を近隣の建物にセントラルヒーティングで供給できるそうです。 

ガーデンまで歩いたら1枚の表示板があり、こんなことが書かれていました。

「イギリスでは自然保護区よりガーデン面積の方が全体として広く、自然保護区と同じくらい野生生物をひきつける。自家製のコンポストは市販されているどんなコンポストよりも良い。自家菜園の有機野菜は人にも地球にも健康的。オーガニックガーデンは役立つ。野生生物の天国で、人も健康になる…」

写真10 はフォレストガーデンです。
絵入りの表示板には、森と同じような構造があり、すべての植物は食用だったり、有用植物だったりすることが書かれ、植物が縦空間に重ねられ、土は常にマルチか植物で覆われて水分と養分が保持されていること、ほとんどの植物が多年草であることも記されています。他にも美しい絵入りの表示板がたくさんあり、わかりやすい説明が英語とウェールズ語でされています。
炭素循環や、窒素固定についての表示板もありました。(写真11)

いろいろな種類のマルチが紹介されていました。ウッドチップ、ダンボール、枯れ草マルチなどの説明があり、実物が見られます。

様々なコンポストもありました。

その奥には受粉や捕食を担う生き物の住処が石積みの中に作られていました。

風力の展示場の前もオーガニックガーデンで、その手前には様々なコンポスト化を担う微生物や、土壌生物の絵入り説明表示がされていました。この奥にあるオーガニックガーデンには4つの植床があり、4年間の輪作やコンパニオンプランティングの説明がされています。

写真18

風力の展示場にそびえ立っているのは、ブレード(羽根)のついた風車で、水くみや粉挽き用に使われます。
風力を活用した様々な旧式の原型モデルと、今日の発電用風車の説明がされています。(写真18)

その近くに発電展示館(Power House)があり、内部には貯水池の水で稼働している小規模水力発電のタービンがあります。
(その他にも2つの水力発電タービンが実際に使われ、安定した電力を供給しているそうです。)
波力・潮力発電の説明もあり、ボタンを押せば潮力がタービンを回してブレードが上下に動いて発電する様子がわかります。太陽熱温水パネルと、複数の温水供給システムも紹介されています。(写真19)

そこから少し歩くとコートヤードに到着します。(写真20)

この建物は太陽光パネルが屋根材として全面に使われています。ここにはレストランがありますが、英国で最も古いベジタリアン・レストランのひとつで、whole food(精製されていない食べ物)が提供されています。(写真21、22)

外にはアルミ缶を使ったハーブガーデンがあり、そのそばには子どもたちの遊び場があり、木製の遊具が設置されています。

奥にはWISEと呼ばれる新しい建物があります。大学院と会議場があり、イベントや結婚式の貸会場としても使われています。この建物は過去30年間の世界中の建物研究に基づいて、建材や建築技術が選ばれ、デザインされています。中に入れば、その素晴らしさがわかるそうですが、私は残念ながらその機会を逃してしました。ご関心のある方はこちらでご覧ください。https://cat.org.uk/info-resources/free-information-service/building/the-wise-building/

私は2泊3日のアバリスツイス滞在期間中、2日間は日帰りでCATに通って昼頃〜夕方まで過ごしました。限られた時間で全てを見ることはできませんでしたが、いろいろ見た中で一番印象に残ったものはThe Treadmill of Happinessという名前の装置です。

写真23

円柱形の回転装置でそこにはWork more, Earn more, Buy more, Need moreという言葉が書かれ、その中央にはHappiness is just around the corner (幸せはすぐそこに)と書かれています。その周りを歩くと、円柱が終わることなく回転し続けます。私達の現代社会の価値観を(皮肉を込めて?)模したアトラクションのようでした。
Wikipediaより、わかりやすい写真をみることができます。

CATの歴史

最後にCATの歴史について少しだけふれておきます。
CATは元スレート〈粘板岩)の採石場だった場所に作られました。宿泊場所と食事を提供されて世界中からボランティアが集まり、全員が同一賃金で同じ発言権を持つスタッフと共に作られました。
とりわけこれまで男性が主に担ってきた領域で女性が働くことが奨励され、協同組合方式で経営に関しても女性が強い発言件を持つことができたそうです。スタッフ全員が経営者であり労働者だった、と伝えられています。
詳しくは「Voices from a disused quarry—Celebrating 40 years of the Centre for Alternative
Technology」を入手しご覧ください。

最後に

以上はCAT訪問の8年後に、訪問時に入手した参考資料1)と2)を参照しながら、書いたレポートです。最新の情報に関しては、公式サイトをご覧ください。

2023年 植月 千砂

参考:

1) Celebrating 40 YearsーーAnniversary Guidebook
2) Voices from a disused quarry—Celebrating 40 years of the Centre for Alternative Technology
3) 個人開設のCATの日本語版案内サイト https://www.cat.or.jp/main.html
地図を、クリックすると拡大。 https://www.cat.or.jp/j-vt/tour_start.htm
4) Treadmill of Happiness 画像 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Treadmill_of_Happiness_(28769627046).jpg

公式サイト