アースガーデン

訪問・滞在・参加レポート

モンシェゴー(Munksoegard, Roskilde, Denmark)

デンマークでは1991年よりエコビレッジ運動がスタートし広がり、1993年にはエコビレッジ全国ネットワークができているいわばエコビレッジ先進国です。私は2015年9月、スウェーデンのマルメ市に滞在中、デンマークのエコビレッジのひとつに日帰りで出かけました。

訪問したエコビレッジは、モンシェゴーです。マルメから鉄道に20分乗るとコペンハーゲン駅に着きます。そこから鉄道でさらに30分行った駅で下車して、バスで5分のところでした。ロスキデ市の端にあり、農村と隣接する場所です。予めメールで英語のツアーについて問い合わせていました。でも私ひとりだったので予約を見合わせたら、代わりに予約なしに現地で自由に参加できるデンマーク語のツアーを勧められました。すべてのガイドさんが程度の差はあれ英語を話すので、最低限のことは英語で手短に説明してもらえる可能性がありました。でも私がうっかりして集合時間に遅れてしまったのです。ツアーに参加しなくても主要道路を歩くだけなら個人訪問もOKだと、予めメールで知っていたのですが結局そうなりました。

往路はバスで下車したものの、バス停からの行き方がわかりませんでした。人の姿も見えないところでしたが、赤ちゃん連れの若いパパが通りがかりました。そこで道を尋ねたら、「モンシェゴーの友人を訪問するので一緒に行きましょう」と言ってくれました。

エコビレッジ、モンシェゴーのプロジェクトがスタートしたのは1995年で、2000年に完成しました。首都コペンハーゲンに通勤可能圏ですが、農業が営める場所なのです。訪問時のHPによると居住者数は225名。木造テラスハウス型の住居で100所帯が共同生活(co-housing)をしていました。写真の看板が示すように、5つのブロック(=住宅郡)に分かれ、各ブロックに20所帯ずつが居住し、各住居の広さは30m²~200m²です。

様々な所得水準の人が住めるようにブロックごとに特徴があります。3つのブロックは賃貸で、1つは高齢者向け(50歳以上)、1つは若者向け(31歳以下)、もうひとつは全ての年齢層向けとなっています。2つのブロックが住居所有制で、1つは個人所有、もうひとつは共同所有(cooperatively owned)となっています。各ブロックには居住者が共同使用するコモンハウスがあります。コモンハウスには、共同炊事場、洗濯場、冷凍庫、子どもの保育スペース、ダイニングがあります。ダイニングでは1週間に3回、住民が当番制で調理をする会食があるので、各所帯が食事の用意をする回数が減り、コミュニケーションの機会が増えています。5つのブロックの中心には旧ファームハウスがあり、カフェ、野菜の販売所、ギフトショップ、レンタルオフィス、レンタル宿泊スペース、レンタル収納スペース、自転車置き場、自転車の修理場、動物飼育場があります。

コミュニティの中は車の通行禁止となっていて、子供たちが安心して遊べます。建物は木造で、外部も内部も環境配慮型のペンキが使われています。

紙を原料とした断熱材が使われ、通路は舗装されずに小石が敷きつめられ、コモンハウスのひとつはストローベールで作られています。

村の人々は環境的持続可能性とコミュニティ・スピリットを大切にしています。木質ペレットと地域暖房システムで、CO2を出さない暖房と建物内給湯がされています。下水はバイオ・サンド・フィルターで地元処理されています。トイレは尿と便の分離式です。尿はエコビレッジの農場に使われ、便は下水浄化施設で微生物処理して年2回取り出されています。カー・シェアリングで車が共同利用され、共同洗濯場では雨水が使われています。ゴミは15種類に分別されています。多くの住人が菜園で野菜を作り、家畜、野菜、穀物用の農場もあります。

コミュニティーの中の様々な業務は、内部の人々からなる作業グループにより行われています。ゴミ捨て場、ビオトープの維持管理、コモンスペースの管理、畑仕事、子供の世話、運営事務、共同購入、訪問者のガイドなどです。できる限り外部委託をせずに住民自身で必要な作業をするので、大人は最低ひとつの作業グループに加わることになっています。音楽やダンスなど文化的なグループもあります。

毎年の環境報告書(Ecological Audit)によれば、モンシェゴーの一人当たりの水の使用量はデンマーク平均の62%で、電気使用量はデンマーク平均より25%少なく、暖房と電気からのCO2排出は60%少ないそうです。モンシェゴー住人で車を所有している人の車利用はデンマークの平均とほとんど変わらないそうですが、カー・シェアリング(車の共有システム)を利用している住民は平均の5%しか車を使用していないとのこと。代わりに自転車が多く利用されています。数年に一度は環境評価報告書が作成されています。

なお、このエコビレッジの構想段階では25人からなるグループができていたのですが、実際にこのコミュニティに住むようになったのは、うち1家族のみだそうです。様々な理由でそうなったらしいのですが、にもかかわらず実際にエコビレッジができ、100所帯が居住しているのです。会食の時に様々なコミュニケーションがもたれ、加えて定期的な会合で話し合いがされ、様々な行き違いや、意見の相違を抱えながらも、より望ましい暮らし方を全員で考えて作りあげてきたとのことです。私たちの参考になる暮らし方の例が、その中に見出せます。
初めての国で、たったひとりで日帰り訪問したエコビレッジだったので、このレポートは文献調査のみになるところでしたが、予期せず住民のおひとりからいろいろとお話を聞くことができました。帰路に往路とは別の赤ちゃん連れのパパに出会いました。ベビーカーが前についた自転車で、駅に向かわれていたので、駅まで同行させてもらいました。すると小雨が降って来る中、自転車から降りて、徒歩の私と一緒に自転車を押して歩いてくださったのです。ベビーカー部分は完全防雨になっているようでした。この方はモンシェゴーの住人で、道中ずいぶん話が弾みました。実はMunksoegardの発音をモンシェゴーとしたのも、この方に教えてもらったからです。

駅に着いた時、私は「もしお時間があれば…」と駅カフェでのお茶にお誘いした所、ご一緒に暖かいカフェオーレを飲みながら、さらにいろいろな話を聞かせていただくことができました。このような出会いはとてもありがたく、見ず知らずの私にお時間を割いてくださったことに感謝しています。良い訪問ができました。

2016年

参考: